第5章 心配性な後輩
楽しみな週末はあっという間にきた。
いつもは嫌々な数学の授業も、キツイ部活の練習も、国光をどんな風にもてなそうかと考えていたら、ほんの一瞬のように感じられた。
校門で中等部の練習が終わるのを待っていると、賑やかな声が聞こえてきた。
「あ、おーい!せんっぱーい!」
は勢い良く飛びついてくる英二を難なく躱しながら、集団の最後尾にいる国光を見つけて瞳を輝かせた。
いささか顔色の優れない大石と、何となく察している不二、そしていつも通り賑やかな英二と別れると、二人はまず手塚の家へと向かった。
***
「あら、ちゃんいらっしゃい」
「お邪魔しまーす」
母親に出迎えられ、国光が身支度を終えるまで暫くお茶をご一緒した。テスト勉強の時に何度かお家にお邪魔しているので、すっかり仲良しである。
「今更だけど、ちゃんがうちに泊まっていったらどう?男所帯だけど、安全面は保障できるわよ」
「うーん、お言葉はありがたいんですけど、日中も朝から部活で空けてるし、ずっと留守なのもそれはそれで心配で…」
「そう…困ったことがあれば国光を頼ってあげてね。ちゃんに頼られると、なんだかとっても嬉しそうなんだもの」
二人きりでお泊りなんて…と窘められるのではと覚悟していたけれど、国光の日々の努力のお陰か、お母さんはそれ以上特に引き留めることもなかった。
シャワーを浴びて着替えた国光がダイニングに顔を出したのは、それから暫くしてだった。
「待ったか?」
「んーん、じゃあ行こっか。それじゃあ国光君、お借りします」
「もう暗いから気をつけて、また遊びに来てね」
ニコッと笑顔で玄関から送り出され、二人はの家へと急いだ。
***
「うー、お腹いっぱい、自分の料理が美味しすぎて太る…」
「の作る和食は美味いからな」
フッと微笑む国光に、思わず頬が熱をもつ。
並んで食べ終わった食器を片付ける。
なんだかこうしているとまるで新婚夫婦みたいだ。
そう思うと急に気恥ずかしくなり、目のやり場に困った。
国光はいつもよりラフな服装だし、隣に立つとシャワーを浴びたばかりなせいか、ほわわんとほのかなせっけんの香りをさせているのだ。