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後輩《テニスの王子様 手塚国光》

第5章 心配性な後輩


抱き着きたい。
無性に抱き着きたい。

あの良い香りに包まれながら広い胸に顔をすりすりしたい。


「?」

急に手が止まったを不思議に思ったのか、国光が顔を覗き込む。呆けていた私と怪訝そうな国光の視線がばちりとぶつかった。

「あ、えっと、何だっけ?」

整った国光の顔が間近にあって、眼鏡越しに睫毛の一本一本まで認識できるほどの距離。ほわわんとせっけんの香りが先程よりも一層鼻腔をくすぐる。


あ、キス、される。

そう思ったのとほぼ同時に、ふわっとせっけんの香りに包まれて啄む様なキスをされた。

「…くにみ…っん…ぅ」

驚きの声も吸い取られるようにそのまま何度もキスをされ、やがてぬるりと舌が口内に侵入してくる。呼吸が浅くなり、息苦しさと痺れるような心地よさの狭間で思考が蕩けていく。膝が震えてへたり込んでしまいそうになるのを国光が察して、そっと腰を支えられ、逃げ出すこともままならなくなってしまった。

「待っ…」

静止の声も受け入れられず、唇を甘噛みされ歯列を舌でなぞられ、背筋にぞくりと快感が走り抜けた。
お腹の辺りがじんじんと熱を持ち、その熱が全身の緊張を和らげてとろりと全てを溶かしてしまいそうで恐くなった。合間にくぐもった声を漏らしながら置いていかれないように必死にしがみついていると、それさえも愛おしそうに国光は目を細めた。

熱を宿した国光の視線がの艶かしく濡れた唇から、うっすらと涙を湛える瞳に移り、優しく指先で零れ落ちそうな涙を拭った事でようやく解放されたのだと理解した。


「食後のデザートがまだだったからな」
「ーーーーーーーっ!!」

不敵に笑った生意気な後輩に抗議の声をあげようとしたけれど、すっかり腰が抜けてしまってそれどころでは無い。身体をひょいと横抱きにされ、ソファまで運ばれるとはすっかりふくれっ面だった。

元々愛らしい顔つきのだったが、身体の中で先程の熱がまだ燻っているのか、頬を上気させてさらに愛らしさを二割増しにしていた。

「…」

「私も、食後のデザートちょーだい」

ふくれっ面のまま、仕返しとばかりに隣に座った国光の膝の上に跨るようにして座り、そのままむぎゅーっと抱き着いて甘える。一瞬面食らったような表情を浮かべた国光も大人しくされるがままだ。
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