第11章 Tsumbergia
「……うん。お願いしようかな」
リオはニコリと笑ってそう言った。
「私、見えなくなってもう20年近く経つの。この20年でたくさんの物を見れなかった、でも幸せだから気にならなかったの。でもね、やっぱり一度でもいいから見たいんだ…。ロシーの、笑った顔」
「……わかった。コラさんもいいか?」
「俺はリオの意思を尊重する。ロー…頼む」
俺は2人の意思を確認し、鬼哭をベポに預ける。
「気を楽にしろ…すぐに終わる」
「よろしくお願いします」
俺はリオが目を閉じたのを確認し再度俺とリオの周りに円を発生させ、彼女の右目に手をかざす
「メス」
手を彼女の右目に当てると後ろから先ほどまでリオの右目に入っていた眼球が箱状の空間に収まって落ちていく。
そのまま用意していた眼球の箱を手に持つとポッカリ空いた右目に埋め込む。
「オペ終了だ。コラさん、リオの前に来てくれ」
俺は目を閉じたままのリオの前にコラさんを移動させ、床に落ちていたリオの眼球が入った箱を拾う。そしてコラさんから少し離れた場所に立つ。
コラさんは俺の言葉に返事をし、リオの前に立つ。
「リオ、ゆっくり目を開けろ」
俺の言葉にリオはゆっくり目を開ける。
金色と水色の瞳が自分の目の前にいるコラさんをジッと見つめる。
コラさんはリオの目線に合うようにその場に膝をつき、リオの手を握った。
「リオ、俺が見えるか?」
「……」
リオはコラさんに握られていない手をゆっくり伸ばし、コラさんの頬に触れる。
「貴方ってこんなに男前だったのね」
優しく微笑みならそう言うリオ。
「はっきり見えるよロシー」
リオがそう言った瞬間、コラさんはリオを抱きしめた。
「良かった…!良かったなぁリオ…!!」
「うん…みんな見えるよ…みんなの顔が見える…!ロー君ありがとう…!」
リオは涙を浮かべ満面の笑みで俺にそう言った。
「今のとこ大丈夫そうだな。今日一日は様子を見させてくれ、明日の朝一の診察で良好なら俺達は島を発つ」
「わかった…!ありがとうなロー!!」
また鼻水を垂らしながら泣くコラさんをリオも泣きながらハンカチで拭いていた。