第10章 Austrian Briar Rose
夕方、俺が自宅に帰ると彼女が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
俺は出迎えてくれた彼女の額にキスをする。
ほぼ毎回なのに彼女は顔を赤く染める。
そんな反応も可愛いと感じてしまう。
「こっちに来て」
彼女は俺の手を握って家の中を歩いて行く。
一応説明しておくと、彼女は盲目で光も感じることが出来ない。
しかし1年住んでいるこの家の配置や間取りは完璧に覚えており、杖や俺の手助け無しで自由に行動できる。
なので俺の手を引いてリビングに連れて行くことは可能だ。
わくわくしている様子で俺を連れて行く彼女が愛おしい。
そんな事を考えているうちにリビングに着いたようだ。
リビングに入るといつも食事をとるダイニングテーブルに様々な料理が並ぶ。
その中で、俺が大好きな物が多くある事がすぐにわかる。
ロールキャベツ、キャベツがたくさん入ったポトフ、レタスサラダ。
そして彼女特製の梅干し。
パンが好きではない俺の為に彼女が梅を仕入れて一から作ってくれる。
盲目であり、あの研究所での生活が長かった彼女がいつ料理を学んだか聞くと、俺の帰りを待つ役5年間に色んな料理を学んだと教えてくれた。
「ロシー、誕生日おめでとう」
優しく微笑むながら彼女はそう言った。
「ありがとう、リオ」
「さぁ席について食べましょう」
人生で最高な誕生日だ。
俺は彼女を見ながらそう思った。