第5章 Chinese cabbage
それからどのくらい寝ていたのだろうか。
鼻に感じた少し甘い香り。
私は目を覚まし、身体を起こす。
香りの元は部屋の外からと気づき、ベッドから立ち上がる。
朝より体調が少し戻っているのかスタスタと香りの発生源に向かう。
向かった先はキッチン。
この香りを作っているであろう彼の名前を呼ぶ。
「ロシー…?」
「ん?ってリオ!?身体は大丈夫なのか?」
慌てたような彼の声に大丈夫だよと伝える。
彼は私の元に来て、私を椅子に座らせてくれる。
でも、それよりも気になる事。
「それよりこの匂い…」
私の勘が正しければ…これは…
「ジンジャーレモンティーだ。レイモンドの嫁さんからレシピを聞いてきた」
「あ…」
「味の保証はしないけどな」
そう言って彼は私にマグカップを持たせてくれる。
カップの中にある飲み物は少し冷ましてくれたのかマグカップからは程よい温かさを感じる。
私はマグカップにあるジンジャーレモンティーを一口飲む。
「……ふふ」
「ま、不味いか?」
「ううん」
お母さんのよりは甘い。
多分はちみつを少し入れすぎたのだろう。
でもとても美味しい。
何より彼の優しさが詰まったこのジンジャーレモンティーが私の身体に染み込む感じがした。
このジンジャーレモンティーは彼の味。