第5章 Chinese cabbage
「ほら…」
彼の言葉と共に私の唇にグラスの感触と水の冷たさを感じる。
ゆっくり飲むと痛んでいた喉が潤う感じがした。
「はぁ…ケホッケホッ」
グラスが離れると喉は潤ったがそれと同時に咳が出てしまう。
「大丈夫か?」
咳が出たことで少し戸惑ったような彼の声が聞こえる。
「だ、だいじょうぶ…」
「そうか…何か欲しいものあるか?腹減ってないか?」
ほしいもの…。
ふと先ほど夢で見た魔法の飲み物を思い出す。
「ジンジャー…レモンティー…」
「ジンジャーレモンティー?」
「ん…お母さんが作って、くれた…魔法の飲み物…」
我ながら無茶なお願い。
だって亡き母が作ってくれた飲み物なんだから。
「わかった!俺に任せろ!」
「え、でも…」
私の答えを待たず、彼は部屋を出て行きしばらくすると家のドアが開け閉めする音もしたから家を出て行ったのだろう。
誰もいなくなった静かな家が寂しくて背中にあったクッションを抜いてギュッと抱きしめて再びベッドに横になる。
『お母さん美味しいよ』
昔の私の声が聞こえた気がした。
彼の帰りを待とうとしたが、襲う眠気に負けてしまい私は再び眠りについた。