第5章 Chinese cabbage
『お母さん…』
誰かの声が聞こえる。
目を開けるとそこにいたのはベッドに横になる小さな私。
『あらあら、どうしたの?』
『喉が痛いよぉ…』
そうだ、子供の頃もよく風邪を引いて寝込んでいた。
これは私の記憶だろう。
じゃなければ私の目にこの映像が浮かぶはずがない。
『風邪ね、熱もあるし…今温かいジンジャーレモンティー淹れてあげるわ』
そうだ、お母さんが作ってくれたジンジャーレモンティー…
あれを飲んだら次の日には治っていた魔法の飲み物。
レシピってなんだったんだろう。
いつか彼が寝込んだ時に私が作れる…今度作ろう…
そこで私の目の前は真っ白になった。
次に目を覚ますと嗅ぎなれた匂いがした。
今ベッドに横になっていたから、きっと倒れたのを彼が見つけてくれたのだろう。
「ぁ…」
声を出そうとしたが、喉に痛みが走りそれ以上声が出ない。
どうしようかと考えていると部屋に誰かが入ってくる音がした。
「リオ?起きたのか?」
彼の声だ。彼の声だけど安心する。
「ん…」
私は短く返事をし、喉に手を置く。
「喉が痛いのか…水飲むか?」
彼の問いに私は頷く。
すると彼の気配が近くに感じ、私を起こしてくれる。
私に負担をかけないように大きなクッションを背中に入れてくれて、凭れても身体を起こした状態でいられた。