第5章 Chinese cabbage
「うん、風邪だね」
ベッドに寝ている彼女を診察してくれたレイモンドが俺にそう言う。
朝、目を覚ますと彼女がいなかったためキッチンに向かうと座り込んで床へ倒れていく彼女を見つけ慌てて受け止めた。
受け止めた身体がとても熱く、息遣いも荒く意識も無い事に気づいた俺は朝一でレイモンドに連絡し往診に来てもらった。
「ここ最近寒暖の差が激しかったし、元々身体が弱いから一気に体調を崩したんだろう。薬を出すから暖かくして栄養のあるもの食べさせて寝れば2~3日で治るよ」
「あぁ…助かったぜレイモンド…」
朝起きて見た彼女が倒れこむ姿だったから心臓が止まるかと思った。
「じゃあ何かあれば呼んでくれ。あ、あとでお粥か何か妻に持って来させるから」
「あぁ、何から何まですまねぇ…」
「お互い様さ、気にしないでくれ」
レイモンドはそう言うと家を出て行った。
俺はベッドサイドの椅子に座り、彼女を見る。
高熱が出ている為顔が赤く、朝同様息遣いも荒い。
俺は彼女の額に乗せているタオルに触れると熱でほとんど潤いが無くなっていた。
タオルを取り、サイドテーブルに置いた水が入っている桶でタオルを濡らして再び額に乗せる。
「ん…っ」
タオルの冷たさに彼女は身じろぐが目を覚ますことは無かった。
(確かに最近寒かったり暑かったりしてたな…)
この島はグランドラインでは珍しく四季がある島。
今は夏から秋にかけての季節の変わり目で朝晩の寒暖の差が激しい。
健康には人一倍気を遣っている彼女でも耐えられなかったのだろう。
普通の人間より身体が丈夫な俺は彼女の変化に気づけなかった。
「リオ…ごめんな」
俺は熱で苦しむ彼女の手を握り、そう呟いた。