第4章 Tree dahlia※
「んっ...」
言葉を紡ぐ前に私は彼にキスをされた
いつもの触れるキスではない
噛み付くようなキス。
彼の舌が私の口に入ってきて...舌を絡ませてくる。
「ふぁ...っ、んぅ...」
知らない。
こんなキス知らない。
でも、不思議と幸せな気分になる。
頭がふわふわして、身体が熱くなっていく。
でも長いキスは私から呼吸を奪っていて、息苦しくて思わず彼の胸をトントンと叩いてしまう。
彼がそれに気づいたのか唇を離し、私の肩に顔を埋める。
「リオ...悪ぃ...」
切羽詰まった彼の声。
息が荒いのは先程のキスじゃない。
(わかった...どうして最近冷たかったか...)
彼の最近の行動。その原因。
普段奥手な自分であれば口にも出せない縁遠いもの。
それは男女の営みだ。
まさかここまで冷静に答えが導けると思ってなかった。
私自身、全く知識が無い訳じゃない。
5年間お世話になっていた知り合いの元にいた時
彼と一緒に暮らす事になった時にお世話になってたお医者さんの奥さんから必要最低限の事を教えてもらっていた。
将来を誓って、好きな人と一緒に暮らす。
一緒の時間が増えれば自然と彼と身体も心も愛し合う日がくる。
その日の為に覚えておいてと...。
私自身、彼と身体を重ねる事に抵抗は無い。
ただ恐怖心が無いかと言われれば嘘になる。
目の事もあるが、何より初めての経験には必ず恐怖心が芽生えてしまう。
でも、ここで怖いと言えば彼はまた我慢してしまう。
それは嫌だ。
私は彼の頭に手を持っていき、優しく撫でる。
柔らかいくせのある彼の髪。
私よりもお日様に近い彼からお日様と煙草の匂いがする。
「ロシー...私は大丈夫だよ...だから」
私を抱いて
私の静かな声は部屋に響いた。