第3章 報復は我に任せよ、我これに報いん
事の始まりは、2ヶ月程前に遡る。
近頃ポートマフィアの縄張りで、所謂"違法な薬"が何者かの手によって、大量に出回っていた。この手の"取引"というのは、非合法のポートマフィアの様な組織にとって、財政の大部分を占めていると言っても過言では無い。森が首領の地位に就く前、先代首領の時代に於いても重要な収入源であり、ヨコハマ一帯の"薬"の取引、需要供給の均衡を厳しく彼らが守っていた。
しかし急激なトップの交代劇により、勢力図の変化に於ける組織内の紛争によって、そうした取引へのポートマフィアの影響力が一時的に弱まった。そうした状況に乗じてポートマフィアから"薬"の取引の利権を奪おうとする組織が現れてくるのだった。
森は早急に財源の復旧を急がねばならないと思い、太宰を御目付け役に最近ポートマフィアに加入した中原にこの案件を処理させることを決定した。
「首領、お呼びですか?」
「ねぇ、森さん、呼ばれたのは良いのですけど、まさか、この五月蝿いちびっ子と一緒に何かやれと仰るのですか?森さん、酷い…!この部屋の窓から飛び降りて死んでやるっ!」
「おい、太宰、手前ェ!なんで毎回毎回手前ェは、そう一言多いんだよォ!!」
「うっわ。いちいち私の云う事に突っかかって来るなんて、やっぱりキミは本物のお子様だねー。御免ね、そんな事にも気付かなくてー。」
首領の執務室に呼び出された2人は、毎度のように下らない言い争いを始める。そんな2人をいつものように柔和な微笑みを湛えて、森は眺めていた。
「キミ達は、本当に仲が良いんだね〜。」
そして、その森の言葉にいつものように同時に2人は強い否定の言葉を吐く。
「「こんな奴と一緒にしないで下さい!」すんじゃねェ!」