第2章 私は神に向かって声を上げて叫ぶ
首領である森が自らの本来の生業とする医術を発揮するに相応しい、最先端の医療器具が揃った医療施設がポートマフィア本部にはあった。まだ首領が交代して久しく、先代首領のせいでポートマフィアの財政は傾き気味ではあったものの、多少の無理があっても組織の為に"投資"は不可欠だと森は考えていた。この医療施設もその1つと言える。
その施設の集中治療室では、無機質な機械音が安定したリズムで響く。中では可愛らしい薄桃色のワンピースに白いエプロン、ナースキャップを被ったエリスが、患者のバイタルをチェックしている。
集中治療室の窓越しに、ポートマフィアの首領然としない、よれた白衣姿の冴えない森が鼻の下を伸ばしてエリスを眺めている。
「リンタロウ!その顔、気持ち悪い!この子のこと診に来たんじゃないなら帰ってよ!」
いつものように森に毒を吐きながら、エリスは点滴を取り替えたりテキパキと仕事をこなしている。
「いやあ、ごめんよ、エリスちゃん!でもね、エリスちゃんがとっても可愛くてね、見とれてしまったんだよ!本当に白衣の天使だよ、エリスちゃん!」
と猫なで声を発しながら、病室に入ってきた。
「ふん!ほんとリンタロウって気持ち悪い!それよりこの子、全く目覚める気配がないわ。リンタロウって、見た目通りのヤブ医者ね!」
とエリスは更に毒を吐く。