第3章 報復は我に任せよ、我これに報いん
「中也君、報告ありがとう。小規模の組織にしてはなかなかの遣手のようではあるね。早めに悪い芽は摘まないと…。そうそう、太宰君、この教団についての"面白い話"と言うのは何だね?」
中原の報告にしばし思案した後、思い出したように森は太宰に訊ねた。太宰は隣に並んでいる中原に一瞬したり顔を向ける。中原は青筋を浮かべて耐えていた。
「その"面白い話"なんですけどね、教団の本部である山手の聖堂の外壁を飾る彫刻が動くという話。で、教団の内部を探っていたゴシップ誌の記者2名がその"動く彫像"に襲われ、1人は死亡したって話。そのうち1人は命はあったものの、あまりの恐怖に精神錯乱状態になってしまったそうです。」
と、太宰はニヤリと笑って報告した。
「ほう、それで太宰君はその正体不明の"動く彫像"は何だと思うのかね?」
森は太宰の話からまだ太宰が隠していることを見抜き、太宰に話の続きを促す。中原は太宰の隣でその話を眉唾物だと疑いがちに耳を傾けている。森に促された太宰は話を続けた。
「さぁ、流石にそこまではまだハッキリとは。ただそのゴシップ記者の生き残りに直に聞いた話では、その"彫像"は、金に輝く目を持ち、蝙蝠の翼、太い腕に鋭い爪を持ち、殴り掛かられればひとたまりもなく頭蓋を粉砕する程怪力で、聖堂を護る醜い"獣"、"ガーゴイル"だったと。まぁ、大方異能者であることには違いないでしょうね。」
「ほぉ、なかなか興味深い話だね、報告ありがとう太宰君。ちなみにその"ガーゴイル"以外に異能力者と思しき人物はいるのかね?」
森は太宰の報告を愉快そうに聞いていた。