第30章 親心
「君はいい加減自由になっていい...」
「?」
「君が調査兵団に入ってからそれなりの月日が経つが、君を近くで見てきて今まで誰にも心を許さず他人と表面的な付き合いしかしなかった君がリヴァイに対しては心を開いているのが私には分かった。そしてリヴァイを見ていても、リヴァイはいつも仏頂面だがミラの前だけでは柔らかい表情をしている。リヴァイが君を特別扱いしているのは明らかだ。私はどちらも良い傾向だと思っているんだ。君は自分で気付いているかは分からないがリヴァイに好意を持っているはずだ...信頼関係以上の...君はリヴァイから好意を伝えられて距離を置いた...そんな所だろうと私は思っている。だとすれば君はいい加減自由になっていい...」
「エルヴィン、お前何言って...」
「私が何を言おうとしてるか聡い君なら分かっているはずだ」
「私は...」
「君の育ての親である「彼」の事だよ。君はもう彼に縛られなくていい」
「私が愛するのは彼が最初で最後だと誓ったんだ。私は彼に縛られてる訳じゃない。私は自分の意思で彼だけを愛し続けている。別に今の現状に苦しんでなんかない」
「彼を自分のせいで死なせた罪悪感か?それとも大切な存在を作る事で失った時また傷付くのが怖いか?それでもういない人間に縋り付いているのか!?」
「もういい!!やめてくれ!!」
「ミラ!!いい加減にしなさい!!彼は私にとっても大切な存在だった。互いに命を預けられる優秀な私の右腕であり、かけがえのない親友だった...その彼の忘れ形見である君は自分の娘同然に大切であり、私は君に幸せになって貰うのが、彼が残した君を引き取った私が、死んだ彼に唯一できる恩返しだ...それに、君に幸せになって貰うには彼を引きずっててはいけない...彼も君の枷になってまで想っていて欲しいなんて思わないはずだ。」
「...エルヴィン...私は仇討ちが出来れば調査兵団に居続ける必要はなかった。だけどその後も調査兵団に残った。それはお前について行くと決めたからだ...彼は君の下で兵士をやれる事をとても誇りに思っていた。親友としてお前を大切に思っているのも彼の話を聞いていれば分かったよ。そんなに彼が全てを委ね誇っていたエルヴィン・スミスという人間について行きたいと思ったから今も私はお前の傍にいる...ありがとな...お前の親心、伝わったよ」