第1章 【シリウス夢】気付いたら好きで
なんなんだこいつは。
……調子が狂う。
自慢じゃないが、女には煩い程に構われ続けてきた。だから、には良い意味で肩透かしをくらった感は否めない。
気を引こうとするワザとらしい態度もなく、甘えてくる様子もない。
かと言ってサボる訳でもなく、俺が作業をしやすいようにサポートをしていた。
控え目な態度だが、実に的確で痒いところに手が届く感じだ。
元来、真面目なのだろう。会話が無くても気まずくも無く、彼女につられるように自然と授業に集中していた。下手な会話に気を割かなくて良いのは気が楽だった。
しかし、俺の刻んだ草の根を見ると突然笑い始める。初めは馬鹿にしているのかと思ったが、明るい声と無邪気な笑顔に毒気を抜かれた。
本気で笑ってやがる。
確かにいつもは細かいことはジェームズやリーマス、ピーターがやっていたから気にしていなかったが……かなり雑だったかもしれない。
大した事ではないはずだが、何故かに見られたと思うと恥ずかしくて、その手から皿を取りあげた。
いや、もしかしたら、突然見てしまった笑顔が、イメージ内の彼女とギャップを起こし、どうしたら良いか分からなかったのかもしれない。
そんな葛藤をしている間に、は俺の手から皿を取り戻して中身を刻み直し始めた。
「……へぇ、言うだけあって上手いもんだな」
手元を覗き込んでみれば、まばらだった根を器用に刻んでバラつきを整えていた。
「でしょ?」
そう得意げに笑う。
今まではとっつきにくい奴だと勝手に決め付けていたけど、どうやらそうじゃ無いらしい。