第10章 実家
タイムスリップして戦国時代に行ってしまったこと、信長様や佐助君の話もした。
その後の……まぁ、連れ去られた話はしなかったけど……
信玄様と出会い、恋に落ち、病気の治療の為に現代に戻ってきた事を伝えた。
最初は私の言葉だけで、その後は信玄様も一緒に説明してくれた。
父も母も兄も……ずっと黙ったまま、話を聞いてくれている。
鉛でも飲み込んだみたいに、黙ったまま……
一通りの話が終わると、最初に口を開いたのは母だった。
「やだ!ごめんなさい!私ったらお茶も出さずに!すぐ用意するわね。きょうこ、手伝ってちょうだい」
「あ、うん」
信玄様を見ると、ニコッと笑ってくれてた。
すると今度は父が
「あぁ、本当だ。すまなかったね。ずっと床に座らせたままで、こちらにら座って下さい」
そう言って信玄様をソファに座るよう促した。
信玄様は顔を上げると
「今の話を、」
話しかけた信玄様の言葉を父が遮る。
「全てを一度に信じるのは、正直できない。
だが、二人が嘘や冗談を言っているようには、とても見えないんだ。もっと沢山、話をしましょう。えっと……なんてお呼びしたら……」
「信玄とお呼び下さい」
真面目な顔で言う信玄様。
「いやー戦国武将を呼び捨てには出来ないなぁー」
はははと、笑いながら頭を掻く父は
「じゃあ……信玄君でいいかな?」
「はい。ご尊父様のいいように、お呼び下さい」
「!!!あーすまない、その言い方は止めて頂きたいな」
「そ、そうですか!?では、なんとお呼びさせて頂ければ、よろしいですか?」
「じゃあ……なんだか照れるが、、、お父さん、お母さんで」
「俺の事もお兄さんで」
横から兄が声をかける。
「いや、お前の方が年下だろう?」
父が思わず突っ込んでいる。
「いえ!是非、“お兄さん”と呼ばせて下さい」
ニコッと微笑む信玄様に……どうやら、家族全員ノックアウトされたようだった。