第10章 実家
都会からは少し離れた、閑静な住宅街。そこに私の実家がある。
キョロキョロと周りを見渡す信玄様。そして
「ここがきょうこの育った地か……」
「大げさですよっ!信玄様っ!ただの住宅街です」
思わずバンッ!と信玄様の背中を叩いてしまう!
「ははっ!今ので気合いが入ったよ」
「わー!すいません!思わず!!!」
二人で笑いあって、手を繋ぎながら歩く。
私の通った小学校や中学校もある。
まだ“学校”と言う存在どころか、寺子屋すらない時代から来た信玄様は、それも楽しそうに聞いてくれる。
「やはり勉学と言うものは必要だな。誰にでも学ぶ権利はあるんだ」
全てが戦国時代に帰ってから、未来に繋げるための話になっていく。
いつでも民の事を考える信玄様は、やっぱり素敵で……
でも、まぁ、色々と話しながら歩いているうちに、家の前に着いた。
家はフツーの二階建ての一軒家だ。
「家に入りますよ?」
「あぁ。頼む」
真っ直ぐに玄関のドアを見つめたままの信玄様。
私がインターフォンを押すと、返事も何もなく、家の中からバタバタっ!と大きな足音が聞こえてきて……
ドアが、バンッ!!!と
開け放たれ
「おかえりなさい!きょうこっ!!!」
「た、ただいま……」
母のあまりの勢いに私が圧倒されていても、母の勢いは止まらないっ!?
「まぁーーー!!!貴方がっ!!!さぁ、中に入って!!!昨日、連絡貰ってから、ずっと首を長くして待っていたのよ!やだーきょうこ、こんな素敵な人が来たら、お母さん緊張しちゃうじゃなーーーいっ!!!」
…………
「さ!早くっ!どうぞ!!!挨拶は中でね!」
「はい、ありがとうございます」
さすがは信玄様。母の高めのテンションも、ニコッと笑い、さらっと受け止めて流してくれている!
「お邪魔いたします」
靴を脱いで揃える仕草すら、格好いい信玄様。
その姿を見て、母は、うっとりとしたため息をついていた……