第9章 宝物殿
「宝物殿……」
佐助君が向かった先は、同じ敷地内にある『宝物殿』だ。
「ここは当時の信玄様の私物や、そのあとに武田家の家宝として扱われきた物が展示されているんですよ」
歴史好きの佐助君は、それはもうイキイキとして説明してくれるんだけど……
なんだか微妙な表情の信玄様。
「信玄様……?」
少し不安になって声をかけた。
「あ、あぁ……なんだか…… 自分が使っていた物を……わざわざ金を払って観るなんて……なぁ?」
あー……そうだよね。
しかも、使ったかどうかすら、わかんないよね。だって信玄様は、ここからまだまだ生きて行くんだから。
「どんな物が形を残して、現存しているのかも確かめておきましょう。今後の参考にもなります」
佐助君の探求心に火が着いたのか、眼鏡の奥がキラリと光っている。
ま、そうだよね。
それも、もちろん必要だし。
「俺の知らない、俺に会いに行く……まぁ、今までで一番、妙な気分だな」
腹を決めたのか、苦笑いしながら信玄様も一緒に入館料を払う佐助君の後ろに着いて行った。
「大人3人、お願いします」
佐助君がそう言ったのに……