第1章 現代
朝早く、チェックアウトを済ませると、私達は簡単な荷物を持って、本能寺跡地に向かった。
確か……嵐が来るのがワームホールが開く条件の一つ……
「天気……いいね……」
「あぁ……でも、大丈夫だ。きっと……後、少し……」
佐助君がまだ明るくなる前の空を見上げる。
「うん……」
私も祈るような気持ちで空を見上げた。
その時……
「あ……」
まだ薄暗かった空が、数時間前までと同じような闇を纏い始め……
私の頬に一粒、雨がポツンと落ちた……と思ったのもつかの間、
一瞬で濃い紫のような、怪しい雲行きになって
ザーザーと大粒の雨が降りだし
大きな音をたてて、雷も鳴り出した!
「きょうこさんっ!」
「佐助君っ!」
私達が目を合わせると
「俺はここで待っているから、信玄様を頼む!」
「うん、わかってる!必ず、必ず一緒に帰ってくるから!」
「ワームホールは、そこだ……」
「うん……」
白い靄が見える。
あそこに飛び込めば……
私は、ごくっと唾を飲み込むと
「行ってきます!」
笑顔で佐助君に別れを告げた。
その時の佐助君の顔は……もう……靄がかかって……
見えなかった……