第8章 愛馬
「久しぶりの馬は、やっぱり良かったなー。戻ったら黒雲もたくさん走らせてやらないとな」
「そうですね」
いつもより笑顔も多く、饒舌気味の信玄様。
そんな信玄様に、私も嬉しくなる。
「今日はこのまま、宿に行ったらいいんだよね?」
「あぁ。もうすぐ頼んである、夕餉の時刻になる」
今日の最終目的地は、温泉宿。
ナビが示す通りに進んで、着いた先は……
「ここ、ものっすごく……高そうなんだけど……大丈夫なの?」
思わずそんな不安が口に出てしまうほどの、高級旅館だった。
「大丈夫だ、きょうこさん」
「ほぅ。立派な造りの宿だなぁ」
信玄様は全く物怖じしない。
うん、流石、セレブだよね。。。一般庶民の私にはやっぱり、敷居が高いなぁ……
なんて気後れしても、信玄様は私の手を握り、すたすた歩いて行く。
そんな私達の数歩前には、荷物を持ってくれる宿の従業員が歩いている。
そして、宿の玄関をくぐると、、、
綺麗で上品な女将が出迎えてくれた。