第5章 退院
「きょうこさん、今日はごちそうさま。美味しかったよ」
佐助君がさっと、立ち上がる。
「うん?もう少しゆっくりしたら?」
「いや、これ以上長居すると、信玄様に睨まれてしまう」
「え?」
信玄様の顔を見ると
「まぁ、また明日。佐助。色々と助かったよ」
「え?え?」
と、止めないの?
「では明日、あまり無茶はしないで下さいよ。大切な日になるんですからね」
「どうかなーまぁ。それもいい思い出になるよ」
信玄様が私の肩を抱く。
「???」
「……じゃあ、俺はこのへんで」
玄関まで佐助君を見送る。
あっさりと手を振って出て行く佐助君。
ドアがバタンと閉まると……
「きょうこ、ここの“しゃわー”の使い方を教えてくれないかい?」
私を後ろからそっと抱き締めて、耳元で甘く囁く……
「あ……」
術後、数日ですぐにシャワーは使えるようになっていた信玄様。病室のシャワーは慣れていたのもあるけど……術後のキズを私に見せたくなくて、いつも一人でシャワーを浴びていた。
「今日は、俺が君を綺麗に洗いたいんだが……ゆっくり湯船に浸かりたいかな?」
狡い……そんな聞き方……
「でも……」
はっきりと返事をしない私に
「傷もほぼ治っているし……二人きりの空間だ。もう遠慮も我慢もするつもりはないんだ」
そ、それって…………