第5章 退院
「あの、今までのは?」
「あぁ、本調子じゃなかったからなー
まぁ場所も場所だったしなー」
確かに……
一度目は戦場の天幕。
二度目は病室……
正直、あの時でも声を殺すのに必死だったんだけど……
「覚悟はいいかい?」
ニコリと頬笑む信玄様に、思わずゴクッと喉が鳴る……
「あの……私は今までで、充分なんですけど……」
「俺をみくびって貰ったら困るなー」
「いえっ!そんな訳じゃっ!!!」
「しーーーーっ……」
人差し指を、私の唇にそっとあててくる信玄様。
そんな仕草だけで、妖艶さを醸し出す……
「こんなにゆっくりと二人だけで一緒にいる時間をとれるのは、きっと現代にいる間だけだ。
帰ればきっと、今まで以上に忙しくなる」
そう。身体を気遣っていたのもあるけど、甲斐の国が復興すれば……今まで以上に多忙になるのは、目に見えている。
「だから、今は……二人だけの時間を楽しもう……」
「はい……」
そうだよね。今、この時を二人でもっと……
信玄様を感じたい。
そんな思いを胸にギュッと抱きつくと……
「いい子だ」
甘い言葉の後には、甘い口付け。
すぐに私をさっと抱き上げると、そのままバスルームへ。
そしてその後は……
信玄様の本気を見せ付けられ……それを全身で感じて……
だけど……
いつの間にか、私は意識を手放していたみたいで……
気づけば……朝……
信玄様の淹れてくれたコーヒーのいい香りで、私は目を覚ました。