第2章 病院
食事は常駐のコックさんが作ってくれるらしく、佐助君がさっそく頼んでくれた。
料理を待っている間に、明日からの検査の予定を聞いたり……そして、
びっくりするほど沢山の書類に、私達はサインをしていた。
「なんか検査一つ一つにサインって、結構大変だね……」
「“さいん”は署名のことかな?」
「あ、そうです!信玄様、さっきのお医者様の説明は……」
「半分も解らなかったなー」
なんて、余裕の笑顔で言ってくる。
でも、それじゃ不安だろうな、なんて思っていたら
「ま、ここでの俺は無力だから、まな板の上の鯉にでもなったつもりでいるよ」
信玄様が……
「鯉……」「鯉……」
思わず佐助君と二人、呟いてから大きな声で笑う。
「こんな立派な鯉は、いませんよ!」
そして佐助君からのつっこみが入ると
「なんだ!?俺はこう、しおらしくだなぁ~」
焦って言う信玄様が、可愛い!!!
和やかだった、春日山での一時を思い出すようなこの時間。
ひとしきり笑いあっていると、料理が運ばれてきた。
「おー旨そうだなー」
なんて、言ってパクパクと食べる信玄様。
それを見て、もう何度目だろう。佐助君とまた胸を撫で下ろす。
しばらくして佐助君が、
「じゃあ、俺はまた明日、来ます」
すっと立ち上がった。
「え?もう帰るの?」
「そうか、佐助。色々と助かった」
信玄様の言葉を聞くと、少し微笑んだ佐助君が
「今日はもうゆっくりして下さい。きょうこさん、君は信玄様と一緒に、病院で過ごしてくれ。夕飯も少し遅い時間で頼んである」
「何から何までありがとう、佐助君」
完全看護も出来る病院だけど、ちゃんと付き添いも泊まれるようにもなっている。
「あ、あとはこれ。着替えやなんか一式入っているから、まぁ~あとは任せたよきょうこさん」
ポンと鞄を渡され、それを受けとると