第2章 病院
「ははっ。どうせ見たことも、想像もつかない物だろうと覚悟していたからなー。一々驚いていたりしたら、身が持たないだろう?
それに、とって食われる訳じゃない。俺は助けてもらいにここに来たんだからな」
ニッコリと笑って言う信玄様。そこに佐助君が話を被せた
「だけど流石にトイレは……」
「ははっ!厠か!あれは参ったなー。勝手が違いすぎる!」
二人で声を上げて、楽しそうに笑っている。
その光景を見て、ここが現代でも戦国の時代でも関係ない
“信玄様がいる”
その事が、私にはとても重要な事なんだ、そんな風に強く思った。
他愛ない話をして、先ほど受け取った書類に目を通し、一通りのサインをしていく。
患者の名前は『武田 信』
いくらなんでも、本名は書けないよね、と言うことでこの病院では「信さん」と呼ぶことに決めていた。
私の立場は『婚約者』で佐助君は信さんの親戚と言うことになっている。
佐助君が書類の一つ一つを、信玄様に簡単に説明している。
だけど信玄様は
「なんだか腹も減ってきたなー」
なんて呑気な事を言っている。
「それだけ元気があれば、安心ですね」
「しかしこの水は、凄いな」
点滴の管をを軽く引いて言う信玄様。
「それは、水分補給をしているだけですけどね。ただ、この時代の物を何も摂取していないから、薬なんかも効きやすいかもしれませんね」
佐助君の言葉に、確かにそうだな、と首肯く。
ある意味、添加物の一切入っていない自然食品ばかりを口にしてきた信玄様。
だから単純な物でも、凄く身体に入りやすいのかも知れないな……
なんて思っていたら、ノックの音が響いた。
「検査結果が出ました。診察室に案内します」
信玄様が私の手を握って、スッと立ち上がった。