第2章 病院
「心配かけたなーすまなかった」
信玄様が私の髪をそっと撫でる。
そしてそのまま私の肩を抱くと、ギュッと抱きしめてくれる…………
っ!佐助君がいるのにっ!?
「し、信玄様っ!!!」
離れようとしたら、
「こら、ここでは俺の名は“信”だ」
なんて言って、より一層力を込めて抱いてくる。
「信さん、きょうこさんが困っていますよ。俺はもうすぐドロンしますので、少し我慢をして下さい」
すると信玄様は私の顔を覗きこんで……
「そうだなー、これからはずっと一緒だから、この続きは佐助がいなくなってからだなー」
いつもの余裕のあるあの笑顔で言ってきた。
「も、もう!佐助君も困るよねっ!ごめん!」
「大丈夫だ、きょうこさん。二人がラブラブなのは十分承知している」
「らぶらぶ……?」
信玄様がその言葉に興味を持ったようで……
「相思相愛の恋仲の事ですよ」
佐助君の説明に満足そうだった…………
いつもの調子が出てきたみたい。私はクスッと笑うと
「うん、そうだ。俺はその顔が見たかったんだ。赤く照れた顔も愛らしいんだがな」
そう言って私の手を握る信玄様。
そうだ。佐助君にも言われてたんだ!
私が常に笑顔でいることが、信玄様の一番の薬だ、って。
気をつけなくっちゃ……
私は笑顔で気になっていたことを、信玄様に聞いた。
「いきなりこちらに来て、一人で検査を受けて……不安になりませんでしたか?」
戦国時代から突然、現代に来て、驚かないなんてのが無理だと言うのは、身に染みてわかっている。
なのに信玄様は落ち着いた様子で……
それが私には不思議でたまらなかった。