第14章 ~おまけ話~ 甲斐の国
「これも燃やさなくちゃね」
「……」
信玄様は返事をしない。
皆も黙っている。
その沈黙を破って、信長様が
「それは武田家の家宝にすれば良い」
「でも、いつまでも現代の物を残すわけには……」
「構わん。それは貴様がここに居たと言う“歴史”だ。なぁ、武田」
その言葉を聞いた信玄様が、初めて
「忝ない」
そう言って信長様に笑顔を向けた。
「その言葉を言うなら、頭を下げるべきなんじゃ……」
家康がボソッと呟いた。
「いや、これで良い」
信長様も、笑顔を見せてくれる。
「それより……それは、使えるのか?」
「はい。使えますよ」
「なら、俺を写してみてくれ」
信長様がニヤリと笑う。
信玄様の顔を見ると、頷いてくれている。
「ふふ、いいですよ」
「頼む」
スッと立っているだけなのに、信長様もモデルみたいに格好いい。
パシャと小さな音をたてて、シャッターを切ると、ゆっくりとフィルムが出てくる。
「何も描かれていないぞ?」
「ふふ、描いてるわけじゃないですよ。暫くすると、ほら……」
ゆっくりと信長様が、フィルムに浮かび上がってくる。
「ほぅ……」
信長様の顔が、嬉しそうに綻んだ。
新しい物や珍しい物を見た時の、信長様の目は凄くきらきらとしていて……
「なんだ、そんな顔も出来るのか」
信玄様が、ボソッと呟いた。
まぁ……その声を聞いた瞬間、信長様はいつもの怒ったような顔になるんだけどね。
そして写真が浮かび上がってくるのを見ていた、政宗が
「凄いからくりだな!!!きょうこ、俺も一枚頼めるか?」
「もちろん!!!皆も撮りましょう!」
そして楽しい撮影会が始まった。
フィルムに限りがあるから、一人一枚ずつしか撮れなかったんだけどね。
撮影もだけど、ほんと楽しい1日だったんだ……