第13章 再会 ~本編完結~
信玄君の言う『変化』を特に感じられないまま、最後に会ったあの日から、3年が過ぎていた。
ずっと、次はいつ来るのかしら?子供も一緒かしら?
なんて言っていた妻も、私が特にそれについて返事を返さないからか、その様な事は言わなくなっていた。
だけどいつも笑顔を絶やさず、私や息子の為に家庭を守り尽くしてくれている。
そして待っていたんだ。
きょうこと信玄君に会える事を。
********
「武田家 宝物殿……?」
休みの日に訪れた場所だ。
「あぁ。信玄君にここに来るように頼まれていたんだよ」
「そう……」
少し不安そうな、妻の顔。
だけどこれはきっと私達の為になるんだろう、と言う自信と確信を持ち、私は 入り口近くにいたスタッフに声をかけた。
「すいません、と申しますが……」
「え……?あ、あああっ!!!
様ですねっ!お待ち致しておりました!!!すぐに当主を呼んで参ります!!!」
名前を伝えただけで余りの驚き様に、こちらが萎縮していると、すぐに身形の良い男性が現れた。
「様!お待ち致しておりました!こちらにどうぞ」
私達3人は、奥の応接室に案内された。
そして
「私が現在の当主を務めております。申し訳ございませんが……何かをお持ちではないでしょうか?」
「あぁ。はい。こちらを……」
私は手に提げていた袋から、あの日、信玄君が彫った木箱を手渡した。