第13章 再会 ~本編完結~
手を洗った息子が、後ろから覗き込んできた。
「それ、きょうこの事だよなっ!?」
私達が見ている小さなコラムは、史実や語り継がれていた正室や側室、そして美少年への恋文、その事について書かれてあった。
早くに亡くなったと言われていた正室は、実はずっと健康で何人もの子を産んだこと。
しかもその正室とは 非常に仲睦まじく、周りが羨むほどで、側室や恋文は、それを妬んだ者がふざけて書いたのではないか?と。
そして最後に正室の名は『きょうこの方』と書かれてあったのだ。
「間違いないだろうな……」
私達の声を聞いて、母さんがキッチンからやっと出てきた。
「何の話?」
「ほら、ここにきょうこの事が書いてあるんだ」
本を見せると
「あら、ほんと。でも小さいわね」
「確証が持てないんだろう」
「でも、そこが きょうこ らしいよな」
息子の言葉に、私達は声を上げて笑った。
そして私は
「次の休みに、皆で出掛けるぞ」
そうだ。あの日の晩、信玄君に頼まれていたんだ。
『何か変化を感じた時に、訪ねて頂きたい処がございます』と。
だが、私は彼にこう伝えていた。
『歴史を何も変えてはいけないよ。娘には辛い思いをさせるかもしれないが……側室や子供の事もだ』
だが
『歴史は変えません。ですが、それだけは……お約束出来かねます』
男の私でも、惚れ惚れするような笑顔で言ってのけたんだ……
信玄君は