第11章 戦国時代
「失礼します」
信長様の待つ天主に通されると、開口一番。
「武田の顔色が麗しいようだな」
「……気色の悪い言い方は止めてくれ」
さすがの信玄様も、その言葉は受け止めることが出来なかったみたい。
「そうか!」
はははっ!!!と大きな声で笑う信長様。
正直……怒られるのかと思っていたのに、びっくりした。
信玄様の顔を見ると、まぁ……大っ嫌いだった相手が目の前にいるんだもんね……憮然とした表情を浮かべているんだけど……
「きょうこ、さっさと手に持っている物を差し出せ」
「あ!は、はいっ!どうぞ!お土産です!!!」
私の間抜けな返事に、シンと静まったけど
「突然、俺の前から姿を消し、現れたと思ったら手土産持参とはな!!!」
と、また豪快に笑う信長様。
……う、確かにそうだよね。間抜けにも程があるよね……
そのまま、ズリズリと移動して信長様に直接 手渡そうとしたら秀吉さんに取り上げられた。
「……すまない、中の確認を……」
うんうん。そーだよね、怪しさしかないよね。この状況。もう、私は安土のメンバーでもないし……
「猿、構わん。早くきょうこに持たせろ」
「ですが……」
ギロリと睨む信長様。
「まぁ……きょうこなら……」
そう言って私の手に、土産物を返してくれた。
「着物を着ているわけではない。さっさと立ち上がって持って来い」
「あ、はいっ!!!」
私はサッと立ち上がると小走りで信長様の前に行き、もう一度座って手をつき
「突然いなくなり、ご心配おかけし申し訳ありませんでした」
そう言ってから、綺麗にリボンをかけられた少し大きな箱を手渡した。