第10章 実家
リビングに戻ると
「戦国時代に戻るまでには、まだ時間があるんだろう?」
父が聞いてきた。
その聞き方は、まるでまたすぐにでも会えるような感じで……
「うん」
一言だけ そう返事をすると、今度は母が
「京都だっけ?今、住んでいるところ。とりあえず、帰るまではここに居たらどお?」
「えっ?信玄様も……?」
「当然じゃないか、家族になるんだろう?それに……たくさん話をしよう。
なぁ、信玄君」
ポンっと、父が信玄様の肩を叩いた。
「ちょっと、お父さんっ!」
あまりの馴れ馴れしさに思わず声を上げてしまうと、信玄様は
「ありがとうございます!お父さん」
その手を取ると、ギュッと握りしめ自分の額に近付け
その仕草はまるで神聖な誓いのようで
胸がギュッと締め付けられた……
そして信玄様はその手を離すと床に座り、また手を突き、今度は頭を床に擦りつけんばかりに下げると
「大切なご息女は、私がこの身に替えましても必ず守り抜き、二人で新しい国を造って参りたいと思っております。
どこの者とも解らない私を、家族などと言って頂き誠にありがとうございます」
「信玄君、頭を上げて下さい」
父がそう言っても、なかなか頭を上げない信玄様。
私はどうしていいかわからず、ただじっと見つめていた。
すると今度は父が信玄様の前に座り
「至らないばかりの娘ですが……娘は私達の宝です。何卒、よろしくお願いいたします」
そう言って手を突いた。
するとその横に、母も座り
「よろしくお願いいたします」
同じように頭を下げる。
ビックリして立ち竦んでいる私の背中を兄に押され、
私と兄も、父と母の横に並んで座り
「よろしくお願いいたします」
頭を下げた。
しばらくして顔を上げると、皆が笑いながら
泣いていた。