第10章 実家
その後はケーキを皆で食べ、信玄餅にいたっては
「武田信玄本人から、信玄餅を貰うなんてのは、うちだけだろうなー」
なんて、嬉しそうに頬張る父と母。
それを見ていた兄が突然
「あ!!!」
大きな声を上げて、2階に上がって行った。
そしてバタバタと階段を駆け降りてくると、一冊の本を信玄様の前に差し出した!
「信玄様、これにサインを下さいっ」
「さいん?あー……横書きで名前を書けばいいのかな?」
「?」「?」
信玄様と兄がキョトンとした顔をしている。
「えっと 信玄様、入院中に何度もサインしてるから、それの事だと思ってるんだと、、、」
「そうか、確かにそれもサインだなー」
父がウンウンと頷いている。
「えっと、どちらかと言えば兄がして欲しいのは、書簡の最後に書くような感じの物で……」
「そんな物でいいのか?」
って、兄が差し出している本!!!『武田信玄』って書いてある!!!
まさかの本人直筆サイン本にする気なのっ!?
「実は俺歴史好きで、子供の頃はよく歴史本を読んでいたんです」
そういえばお兄ちゃんの部屋にはそんな本がたくさんあった気がする。
「名前を書くのはいいんですが……
せっかくだから、筆はないかな?」
「え?筆ペンとか?」
「ぺん……?」
ペンの説明をなんてしようか迷っていたら、母が
「あ!そういえば書道のお道具がまだあるんじゃない?」
「それなら私の部屋にあるかも!見てくるね……ってそこまでして、書きます?」
信玄様の顔と家族の皆の顔を見ると
皆が期待した目で見ている……
そうか、そんなに欲しいのか……
信玄様もなんだか書く気満々の顔をしてるし……
「持ってきますね」
私は自分の部屋に向かった。