第9章 ヒメ…ハツジョウサイカイ
楽屋には何とも言えない空気が漂う。
「ほら。仕事中!この話は終わってから!」
翔ちゃんが手をパン!と叩いて、何とか落ち着いた。
…潤くんの事、押し付けたの?
…相葉さんにとっては、嫌なことだったの?
グルグルそのフレーズが頭の中でループしてる。
久しぶりに…5人で食事をする事になった。
飲んでても、俺はぼーっとしてた。
あれだけ、優しい相葉さんを怒らせた。
この事がずっと引っかかってた。
「次何食べる?」
「俺、唐揚げ!」
そんな俺をよそに、翔ちゃんと相葉さん2人が盛り上がってる。
「…湿気た顔してんじゃないよ」
「…じゅ、んくん」
「…ごめん」
「…え?」
「…雅紀、取って。ごめん」
潤くんが優しく笑う。
「…俺は、べつにっ」
「でも、ごめん」
「好きなものは好きなんだよね。いくらニノでも譲れない」
…泣きそうだ。
こんなに意思を伝えてきた潤くん、初めてだから。
そんなに、相葉さんの事……
「ふふっ。譲るもなにも、俺にはちゃんと恋人がいるんですよ?潤くんが幸せならそれでいいんじゃないですか?」
俺と潤くんのやり取りを大野さんも黙って見守ってる。
「確かに、相葉さんに開発されたよ」
俺の突然の告白にワチャワチャしてた相葉さんと翔ちゃんもゴクリとつばを飲み込むのが聞こえた。
「けど…それはそれ。俺がオトコしか興味がないのは、昔からだから」
「…ニノ」
「潤くんが気にすることはないからね?とことん幸せになって?俺も俺で幸せになるから」
言いたいことだけを言って一気にビールを飲み干し。
気付いたら完全な酔っぱらいに仕上がってた。