第8章 ヒメ…ナミダ
「……ん」
遠くから聞こえる電話の音で、目を覚ます。
寝てたんだ…。
うーん!!っと背筋を伸ばしてバッグを漁る。
「…はい」着信相手を見ずに電話に出る。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ?」
寝ぼけて出た着信の相手は…
「あれ?ニノちゃん、昨日の服のまま寝てたの?」
「うーん?めんどくさかったから…」
キッチンに行き冷蔵庫からビールを2つ手にとる。
「…どう、だった?」
コトっとテーブルにビールを置くと同時に、心配顔の相葉さん。
「本人に聞かなかったんですか?」
ソファに腰掛けてプシュっとプルタブを開ける。
…潤くんの想いは、俺からは…言えない。
グッ!と半分まで胃の中にビールを流し込む。
「松潤に電話するけど出ないしさ?まだニノちゃんと一緒なら…って遠慮しちゃって」
「…その俺が、もう…帰ってきてる、って事は…おバカな相葉さんでも分かるでしょうよ」
半分相葉さんに八つ当たりする言い方。
「…だめ、だった?」
…あー!!もっ!!
なんでこの人は俺が酷い言い方しても怒らないんだよ!!
「…次の、相手…でも探します、よ?」
潤くんの気持ち知ったら、もう…こうやって相葉さんと二人で会うことも許されない…。
泣きそうになるのをぐっと堪えて残りのビールを一気に飲み干す。
「…ニノ」
…けど。
このおバカさんは…
そんな俺の気持ちを振り払ってくれる様に
優しく…俺を抱きしめてくれた。