【Harry Potter】 Missing Heart
第23章 シングルアゲイン
スネイプは話題を変えるかのようにの部屋にBGMとして流れていた曲に気を向けた。
「今流れているこの曲は何て言うのかね。」
「これですか?シングルアゲインという曲です。日本ではそこそこ人気のある歌なのですよ。」
変わり続けてく町並みのように、もとには戻れない若き日のふたり。
彼女を選んだ理由(わけ)さえ聞けずに、ただ季節は流れ見失った約束。
もし、再び出逢って瞳を探り合っても。隔てた時間(とき)を埋める
すべは何一つない。手放した恋を今、あなたも悔やんでるなら。やっと
本当のさよならできる。
は紅茶を飲みながら微笑んでいるが、スネイプには歌詞が胸に刺さるようだった。
この曲は若き日のスネイプとリリーエヴァンズを思い出させるには十分だった。
にはスネイプの過去など知るよしはない、と想いが通じ合った今ですらもスネイプにとってはリリーエヴァンズは特別な女(ひと)だった。
しかしスネイプはリリーエヴァンズへの想いを断ち切りたいと願っている。
「君もこの歌詞のような恋をしたことがあるのかね。」
「え?」
出し抜けに問われたスネイプの言葉には真意を図りかねた。
「恋ですか…残念ですが今まで恋らしい恋をしたことがないので、もしかしたら失恋に夢を見ているのかも知れませんね。」
「失恋に夢を見ているとな?」
「ええ、今まで真剣に相手を想うような経験がないので。…先生はこの歌のような恋をされたことがあるのですか?」
「…この年になれば、一つや二つはな。」
胸を抉られるような思いがスネイプには過ぎる。が、から帰ってきた言葉はスネイプの考えのつかないものだった。
「本当に本気で人を好きになれたということはとても素敵なことだと思います。その思い出は大切にしてください。」
「・・・君は私の過去を否定しないというのかね?」
互いの想いは通じあったとはいえ、スネイプとのシビアな関係では、二人きりの時間と言えども世間一般的な甘いものはまだない。恋を知るスネイプだが一抹の寂しさはあるとはいえの言葉には驚きを隠せない。