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Nerine-ネリネ-

第2章 デジャヴ




自転車が目の前でスッと消えた。
もうこれ突っ込まないぞ、山姥切のお色直しにしろ敵の消滅にしろ、謎の政府にしろ。

「ちょうど、こんな時間帯が神隠しに遭いやすいんだよな、じゃあ大将、神隠しに付き合って貰おうか」

私の肩に片手を載せ、薬研は先本丸行ってると言うと同時に目の前で消えていった。はらはらと薬研が居た場所に桜の花びらが落ちる。


静かに、けれども川のせせらぎがうるさい。
下を向いたままの山姥切ははっきりと言った。


「これから先、誰か一人を選べと言われる事があるだろう。そしたら、あんたは俺を選んでくれ」

顔を上げ、少し背の高い山姥切の目と合う。
力強く、なにか決意を秘めたエメラルドグリーンからは目が話せなくなった。


「俺の名前は山姥切国広。俺はあんたの初期刀になって支える」


私の返事を聞かず、いや、私が返事に困っているからか山姥切は私の手首をそっとつかみ、薬研がやったように夕暮れの川沿いから私ごと消えた。


****

さっきまでの光景は一瞬で室内へと変わっていた。
木の匂い。古民家の匂い?この室内は古くは見えない。かといって新しいとも思えない。

「着いたぞ、ここが本丸、あんたの家だ」


ここから各時代に飛べるんだ、と付け足して私に靴を脱がせる。山姥切はというと、魔法みたいにシュンッと靴が消えていた。


「…?ああ、靴か。この程度なら体に取り込める。本体も、刀装もだ。これくらいで驚くか?
…ああ、最初はそんなもんだったな、」


「ひとりで納得しちゃったよ……」


私達のいる部屋の外から早歩きの足音がする。
ひょっこりと現れたのは、薬研ではなく背の高い緑の青年。


「おっ、山姥切と……ああ~、本当に連れて帰ってきたんだな、そういう時期だもんなぁ」


「御手杵、」


おてぎね、と呼ばれた青年は緊張感のある仕草で手招きをした。


「2人とも、早く!死に目に会えなくなるぜ!」


それを聞いた山姥切は私の手を引いて、廊下を走った。呼びに来た御手杵よりも速く、時々転びそうになりながらも無我夢中で。

綺麗な庭が見える、とある和室。
廊下を走ってる時には分からなかったけれど、その室内には大勢の人たちが居た。
囲むように座っていて、その中心には布団が敷かれている。
おばあさんが今にも死にそうな中、呼吸するのも苦しそうにしていた。

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