第2章 デジャヴ
家に着くまでの間、さっきの事もあったけれど途中まで思い出せていた夢の事を考えようとしている自分がいる。
そんな事、そんな些細な事自分の部屋にこもって考えればいいのにってわかっている。
いつも賑わう、川沿いの一車線。
ここは車よりも犬の散歩や野球部のランニングコースがある。
土手の下には劣化したアスファルトの一車線。
今日はいつもと違ってすれ違う人が少ない。
夕日が照らす土手は、秋の草原のように。
私の脳裏に、幼い頃の思い出が今と重なる。
今みたいな夕日の中で、おばあちゃんと手をつないで、ここを散歩した記憶がある。母のような、いや母以上に歳を重ねた手は少し乾燥していて、大きくて、小さな私の手を包み込んで。暖かった。暖かったなぁ。私が覚えている、最初で最後のおばあちゃんとの思い出だ。
ノスタルジックに浸っていると、下なんて向いていないのに、少し遠くの方から体格の良い黒ずくめの3人組が体を左右に揺らして向かってくる。いつの間にそんなに近くに…。
走っているわけじゃないし、近くに車があるわけでもない。ちょっと意識を反らした、その間に現れたみたいに。
なんだろう?本能的に危険を感じる。心臓が高鳴る。ふと、私の後ろを振り返ると前方ほどではないけれど、それよりも近くに2人の黒ずくめの人が近づいてきていた。
黒尽くめって。
マフィアとかチンピラとか。そんなんじゃないってわかる。だって私の後ろからやってくる人たち、顔がやせ細って…を、通り越して骨だもん。
ペットも連れているし。犬なら分かるよ、チワワとかダックスとか。怖い人ならドーベルマンとか似合いそう?
骨の蛇だよ、骨のへび。
ペットの時点で理解せざるを得なかった。白昼夢なんてものでもない、非現実的な事が起きているって事を。
待てとか言葉は発して来ないけれど、私が前後の存在に気が付いてからは歩む速さが増している。
この土手の上の道路には逃げる場所はない。これは頭の良い人だってそう思うに違いない。だったら、土手下の方が選択肢がある!
進行方向側には交差点(ちょっと遠いけど、後ろ側よりはマシ)、土手下から行けば道路の下を潜って行けるし、ここの川はそんなに深くないから渡っていく事も行ける!
そこまで考えて、私はようやく思い出せた。
夢の中で追いかけてきた存在、それは私の前後にいる者達だという事。