第7章 霊力
「加州、今日歌仙内番じゃなかったよね?」
安定が加州を覗き込む。
加州は頷いて少し手を上げた。赤いネイルがきらりとしていて、ちょっと私のクラスの女子を思い出す。
「じゃあ、お昼を作るためにキッチンにいるかなぁ。もしも他の料理好きの人しか居なかったら、部屋で趣味に勤しんでるか、本丸内で風流探ししているとは思うんだけど」
風流探しとは。疑問があるけれど安定は気にしてない…専門用語かしら。
安定の顔を覗き込む加州。ぱちくりと瞬きをして安定はそうだ!と何か閃いたようだ。
「僕たち本丸をぐるっと手分けして見てくるから主はこのままキッチンに向かってて!
加州は右側から行ってよ」
「えー?俺途中まで主と一緒の左側がいいー!」
僕だって、ブス、なんだとブス。と廊下で口喧嘩が始まる。
そこに背後から足音が聞こえたので振り返ると体は大きく、しかし優しそうな表情の蜻蛉切がやってきた。
「昨日は村正が主に失礼な事を…申し訳ない。しかし、あんな奴でも本当は良い奴なのです。勘違いされやすい奴なのです…」
昨日の仁王立ちの全裸の村正を思い出す。
もしかして浴室内でめっちゃ突っ込んでた…そうだ、蜻蛉切って言ってたなぁ。
加州&安定コンビの喧嘩がピタッと止まり、解決したのか安定が右側…、進行方向の逆に小走りで向かう。加州のブサイク、という捨て台詞と共に。
「あんの馬鹿っ!合流したら覚えとけよ~…」
そんな様子を蜻蛉切と私は見ていた。
「ほんと、加州と安定仲良いよね…」
さほどさっきのことで腹が立ってる様子ではないのか、ケロッとしている加州はそう?と返す。
「かつては同じ主に使われていたからねー、沖田くんの。本丸じゃそんな感じの刀、多いよ?同じ主とか、同じ刀派とか…」
蜻蛉切と村正もそんな感じね、と言って私達も歩き始める。
しばらくすると加州は、3人パーティから抜けた。
私と蜻蛉切でキッチン側に進むことになる。
「仲が良い、と言えば…山姥切殿と何かありましたか?」
「えっ?何か、とはどのような?」
脳裏に自室で起きたあんな事やこんな事を思い出しながら質問返しをしてしまった。あんな事っていっても健全なんだけれど。
少し怪しいぞ、と言わんばかりに蜻蛉切は顎に手をやってううん、と唸る。
「その、言いたくないのならば結構ではありますが…、」