第7章 霊力
「綺麗とかも、いうな…」
まだ桜の花びらが舞う。先程の量じゃないけれど。
少し俯き気味でぼそりと言う、多分桜の発生源。
そのうつむいた表情を見ようと、フードの布をつまんで少し上げる。
「冗談抜きで綺麗だと思うんだけどなー?髪もさらっさらだし…」
信じられない、というような目でもあるし怯えた小動物のような目でもあるエメラルドグリーンの瞳。本日一、のぼせたように真っ赤になった。
「あっ、そうだ!まんばちゃんまんばちゃん、本体見せて!長谷部が言うには遠征先とかでは木刀に見えるように術かけてたんでしょう?私、きみの刀みてな、」
「……っ、後にしてくれっ!」
座っていた位置から、凄まじい勢いで去っていった。なんだあの反応、ものすごく可愛いな。
でも、ただ可愛いっていうより…。
私は少し熱い顔を、両手で触れる。いつもよりも熱い。
これって彼が気になって来ているのかもしれない。
でも相手は刀剣男士、刀剣の付喪神だ。ただの人間で、新しい審神者の私なんかに好かれても迷惑だろうな…。
気持ちに蓋をするように、私は少し鼓動の早い胸に手を当てた。
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部屋に散った桜を、自分の鞄に入っていたクリアファイルで仰いだり、すくったりして片付けた。
これは掃除用に小さな箒も用意したいな…。
その後、部屋に居ても審神者になりたてにはすることがなく。真っ赤になって飛び出していったまんばちゃんも帰ってこないし…ぶらぶらと本丸内を歩くことにした。
ただの散歩じゃなくて…ほら、部屋に座布団を2枚ほど欲しいし。あと、歌仙に洗濯物をどこに干しているかも聞きたいし。
自分の中に目的を設定する。まずは歌仙を探すこと。あと、座布団余ってるのない?って聞こう。
キッチンのある方へととりあえず向かった。
向かって数歩、赤と黒、水色と白。加州と大和守に遭遇した。
何か互いに罵り合ってたみたいだけど、進行方向から私が出てきたのでそれはピタッと止んだ。
「あ、主じゃーん!」
「あら、加州くんと大和守くん」
「僕のことは安定で良いよ。何か捜し物?」
この2人、昨夜も、朝も一緒だし仲が良さそう。さっきの喧嘩?も喧嘩するほど…っていうしね。
私は出会った二人に、歌仙を探しているという事とその理由、それから部屋に余ってる座布団があれば欲しいという事を話してみた。