第7章 霊力
目の前の山姥切は私の両手の平に、手の平を合わせる。
両手とも手を合わせた状態、指の間から目の前の山姥切に視線を移した。
「あの、これは一体…どういった事を…?」
「どうって、何か感じたりはしないのか?」
合わせた手から感じられるもの。いつもと違う感覚はなく、ただそこに感じる事といえば…私よりも少し熱く、僅かに手汗をかいていて。それからちょっと手の平は硬い。あと、手が私よりも大きい。
それから…ドキドキしてきた、ような気がする。
私は指の間から相手の顔を見るのを止めて、山姥切のネクタイへと視線を落とした。
そんなに長くこうしてる訳じゃないけれど、この手を合わせてただお互い喋ることのない沈黙が、とても長い時間の様に感じる。
「霊力の感覚を掴めてきたか?」
話しかけてきたのでハッとして、視線を指の間から山姥切に移した。
「いえ、なーんも。まんばちゃんはその、霊力を送っているんでしょ?」
何かヒントがあるのかもしれない。
なんだか私も手に汗をかいてきた。
「いや、送ってはいないが……」
「えっ、それじゃあ…今までここの主だった人達って、手を合わせただけで霊力が分かっていたの…?」
私の能力無さすぎでは。青ざめそうになる私。眼の前の山姥切は…少しきょとんとしてだんだんと赤くなっていく。
真っ赤な山姥切…、まんばちゃんは手を合わせるのを止め両手をすごい勢いで引っ込めて、なにか口ごもった。
「そのっ、…俺は霊力に特化しているわけじゃあ無いからな……」
「えー…それって手を合わせ損…いや、合わせ得…?」
私はゆっくりと手を自分の膝へ。それそれの手を拳にすれば手汗が指先を湿らす。
まだ赤らめた顔で何の得だ?と疑問を投げかけてきた。そりゃあ、私にとっては褒美みたいなものだけれどもそんな事は口には出さず。
「まんばちゃんの可愛い反応が見れたことが"得"かな?」
ニッ、と笑って言えば更に真っ赤に。そして部屋の中にぶわっと桜が舞う。桜が目の前の人を彩っていく。とても似合っていて綺麗…。
「可愛いとかっ!言うなっ!」
「これは綺麗な…」
桜の花びらがひらひらと自室に舞う。当然部屋には桜なんて無いのに、まるで目の前から吹き出てきたみたいに。
風のない室内。畳の上が薄桃色のドットで彩られた。