第2章 デジャヴ
私は最近、よく同じ夢を見る。
夢なんて、世間では全く見ない人とか、白黒だとかカラフルだとかいうけど、私が見る夢はカラフルな夢を見る。
昔から夢は見るし、本当に時々だけれど夢にみた事が翌日や、近いうちに起こる事もあった。それってデジャヴって言うんだって。
…で、だ。
"私は最近、よく同じ夢を見る。"
これって、デジャヴだと思うんだけれど、困ったことに内容は起きた時にはすっかり忘れてしまっているのだ。
高校3年になったばかりで、悩むべきは進学か就職かを考えるべきなのに、この春の少し暖かな風のせいか昼食をしこたま食べたせいか、集中が持たない。
私は頬杖をつき、遠くの黒板を滑るように書かれていく、チョークの曲線を眺めながら夢を思い出そうとした。内容なんて全く覚えちゃいないのに、思い出さなくてはいけないって思えたから。
頬杖をついていないと、机に突っ伏して眠ってしまうな。
なにか、少しでもいいから内容を思い出せる事は起きた時点で残って居なかっただろうか?
…そういえば。
起きた時には心臓がバクバクと跳ねていた。恐怖?いや、こういうのってよくある追いかけられている時のじゃあなかったっけ?多分だけど、追われていたんだ。
散らばったパズルがひとつ、ふたつと繋がっていくように、今になって夢の内容を思い出していく。
私は、"なにか"に追われていた。
なにかってなんだろう?
ゾンビとか殺人鬼とか、チェーンソー持った男の人とか…ライオンとか?それはないよなぁ…犬や猿、猪ならギリあるかも。
動物って感じじゃあなかったような。なんだっけ?
それで。誰かに助けられて…あれ、助けられたっけ?でも、一人、私より背が高い人が居たな、顔は覚えてないし、なんとかかんとか~の後に走れ!って言ってた気がする。
じゃあ、この青年はいいやつなんだろう。
私は"なにか"に追われていた。青年が助けてくれた。
更に見た夢について考えていこうとしたところで、私の背中、左側を硬い物で3度突かれた。
「ハルカ、ハルカ!」
「え?」
振り返れば仲の良い友人が、寝てんのかと思って…と現実に連れ戻してくれたらしい。
もう一度、黒板をみれば数学は国語に変わり、ホームルームに変わる一歩手前だった。