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Nerine-ネリネ-

第6章 初日の朝



「今から行く遠征は資材集め…と、いえば聞こえは良いけど、火事場泥棒をしにいくのさ」


「えっ、それ遠征先で見つかったら捕まったりするのでは…?」


手錠をかけられる姿を想像した。想像の中で手錠をかけられるにっかり。でも捕まってもなお、笑っているのが思い浮かぶ。

「ふふ、ずいぶん昔の時代に向かうんだけれどね、行く刀剣男士によってはひたすらに火事場泥棒に勤しむもの、災害などから人々を助けてお礼に貰うもの…様々だよ?」


「へぇー…。ちなみにこの遠征部隊はどっち派なんです?」


名前の通り、にっかりと。日本号はにっかりをみて吹き出しそうになる。
この遠征部隊にいる大倶利伽羅は呆れているのか、ため息をはいた。


「この遠征部隊はね、しっかりと火事場泥棒してくる予定だよ?」


「わお…見つからないように祈ってますわ…」


そのやり取り後、言ってくるねと転送される5人の部隊。見送りが終わって山姥切はこちらに向き直る。

「遠征先によっては戦う事もある。また、本丸や主に必要なものを、ここから違う場所に行くのも遠征に部類される。
それは昨日のように、審神者を狙ってくる事があるからだ」


昨日の襲撃は、時の政府が次期審神者だと目をつけていたからな、と山姥切は続け、軽く私の背を押し、転送室から廊下へと戻った。
白い布の下、両目と視線が合わさる。

「だから、あんた一人ではもうあの時代に戻れない。ここは政府の監視外のようなものだが、遠征先は政府の監視対象だ。遠征先ではハルカと名乗れず、偽名を使って行動してもらう」


買い出し用の遠征までにはなにか、自分に合う良い偽名を考えてくれ。その言葉に私はうん、と山姥切に聞こえるように答えられていただろうか?
部屋に戻るために歩みながら、私の頭の中に出てきそうで出てこない、もやもやとした存在を感じながら、白い背中を追った。
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