第6章 初日の朝
「かなり臭うぞ!遠征に行くというのに、朝から飲んでいるのか!?」
あー?と不思議そうに返事をして、思いついたように腰にぶらされた酒瓶を手に取る。中に入った液体がたぷん!と存在を主張した。
「昨日、先代が亡くなったもんで、酒飲める一部の奴と日を跨ぐまで飲み明かしたんでな~…」
「任務に支障のない程度にしろっていつも長谷部あたりに言われているだろ…いい加減にしてくれ」
ははは、と笑って酒瓶から手を離す。紐が腰に着いているので、チャプンといって再び酒瓶はぶら下がる。
山姥切はやや俯き(後ろから見てるとそれがてるてる坊主度を加速させてる)大きなため息をついた。
「まぁ、転送室についたし、ちゃっちゃと終わらせてくるからよ、心配すんなって。お二人さん、遠征部隊の見送りにきたんだろ?」
引き戸が全開になっており、その室内に入っていく日本号。先に何人か待っていて、おせぇぞと文句を言っているものも居る。
日本号が転送室に入り、合流してこちらを向く。その日本号より数歩前に出る刀剣男士が一名。
やや緑の髪色のポニーテール。白い布を肩に羽織っている。当然でしょうけど、流石に任務なので皆名札は着けていない。
その青年はにやり、と怪しげな笑みを浮かべた。
「やあ、こうして正面で顔合わせするのは昨晩の脱衣所以来かな?」
「脱衣所………あっ!」
サーッと自分が青ざめていく感覚。あれは上半身しか見てない!もろに見てしまったのは村正…!
「ふふふふ、冗談、冗談だよ?僕の名前はにっかり青江。今から行く遠征部隊隊長だよ」
「昨晩はノックするべきでした…すみません、何も見ていませんので…うん
本題に戻りますね、遠征よろしくお願いします」
うんうん、とにっかりが言うと、山姥切は審神者のやるべき仕事を説明する。
「明日までは先代が決めた、遠征や出陣、内番がある。その組み合わせは主であるあんたが決める。慣れるまでは近侍や俺に相談してくれ。
…で、遠征や出陣はこの転送室から向かうことになる。ここはあんたがこの本丸来る時に通っただろう?」
あー、きたきた。
山姥切と薬研。買い出しに言ってたという巴。
昨日のはなんだろう、出陣かな?
ぴっ!と音がしそうな勢いでにっかりが人差し指を立てる。