第6章 初日の朝
私が敷布団を畳み始めると障子が開けられ、庭の騒がしい雀の鳴き声と共に、待機していたまんばちゃんが入ってくる。
「今日の朝食までは昨日居た刀剣男士全員がいる。朝食を摂った後、遠征部隊が出発する。
あんたには場所の確認を頼むぞ」
布団を抱えて持ち上げると、押入れの戸をまんばちゃんが開ける。私はありがと、と言いながら押し入れに布団達を突っ込んでいく。
「その遠征部隊って、誰が行くとかもう決まってるわけ?」
最後に枕を突っ込み…あと、寝巻きの電気ネズミの抜け殻も追加して押し入れを閉じた。
「今日と明日までなら先代が決めている。だから、今日明日は刀剣達がどう動いているか見てもらう。そして明後日から近侍も決めて、部隊編成や霊力を高めていく訓練をしていく予定だ」
「ふーん、なるほど。まんばちゃん頼りになるね!」
くっ、と小さく呻き片手で自分のフードの端を引っ張って顔を隠す。
「その呼び方は皆の前ではやめろよ?場の空気が緩む…」
なんだー、照れてんの?と肘で小突きながら、大広間へと足を向ける。
別に照れてるわけじゃない、と反論しつつ並んで縁側を進んだ。
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「おいっし……」
朝から、一口目から感動する。
一部昨日の残り物、あとは昨日なかったメニュー。おふくろの味ってやつか、いや私の母そんなに料理が好きなわけじゃなかったけど。
二口目もまた美味い。繰り返す感動に近くに居た、昨日の村正を引き取っていった大倶利伽羅がちょっと引いていた。
「そんなに喜んで貰えると、僕たちも料理の作り甲斐があるよ」
おかわりもあるからね、と燭台切がいう。ちょっと目が潤んだ。
「まま…燭台切のママ…、光忠ママ……」
「ハルカちゃん、僕はキミのママじゃないからね!」
食が進むなか、隣に座っている歌仙が一つ咳払いをする。そして少し声のボリュームを下げて私に話しかける。
「君の洗濯物、洗濯機に入れっぱなしだったから干させて頂いたよ。全く、そのままにしたらまた洗わないといけなくなるじゃあないか」
「歌仙ママ…」
僕は君を産んだ覚えはないよ、と歌仙は静かに食事を再開した。
私が半分ほど食べた所で、遠くの席から薬研がやってきて一度、メガネをくいっと上げる。
薬研の白衣はアイロンがかけられたようにシワひとつなかった。