第5章 月
「俺の兄弟だ。すごくしっかり者で、サポートをしてくれるはずだ」
同じ刀派を推すのもどうかとは思うが…と続け、確かなんだと更に推した。
「じゃあ、明日頼んでみようかな…」
「そこは頼むんじゃあない、俺たちはいつだって近侍になる事に期待をしているんだ。
…なんだ、不思議そうな顔をしているな?何故俺たち刀剣に付喪神が宿ったと思う?」
まったく、と正座はあぐらになり山姥切は腕を組んでちょっと険しい顔つきになった。
えっと、付喪神って長く愛用されたものに宿るんだったよね?そういった事は学校で習うものじゃなく、たまたま家庭で知ることになるか、本や漫画とかで知るような事だ。私も漫画で読んで知ることになったんだけれども。
「刀が長期に渡って愛用されたから、ですか?」
「……。愛用の意味わかってるんだろうな?」
愛された、という意味であってます?と小さく呟く。その言葉を聞いてから山姥切は続けた。
「俺達刀剣は…それぞれが、何代にも渡って振るわれたり、守り刀として持たれたり、美術品として大切にされたり…時には逸話を持ったり。長きに渡って、人間に愛されてきたんだ。
あとは長谷部からきっと聞いただろう、審神者によって刀剣男士を顕現する…」
うんうん、と山姥切の話に相槌をうち、続きを待つ。
「主に愛用される。それを一番身近に感じられるのは近侍だろう?」
その言葉できちんと理解した。
頼むんじゃない、堀川国広に任せるという話。
「だから、頼むんじゃなくて堀川国広に任せるって事を言いたいんだよね?」
ふっ、と山姥切が笑った。
それじゃあさ、と私は指先を山姥切の胸に指し、一つ思ったことを口に出してみる。
「初期刀ってつまりは、他の刀剣男士や近侍以上に愛されたいって願望?」
しばらく固まった山姥切は、みるみる真っ赤になって素早く自分のフードを被った。
そんな山姥切、…まんばちゃんを見てなんだか私も恥ずかしくなってきた。
「そういう事を聞くな…!
くっ!ち、ちがっ、わないが…!」
両手でフードをしっかりと、深々とかぶっててるてる坊主のようだ。てるてる坊主が前後左右に不規則な動きをして暴れている…。フラワーロックみたいで反応がめちゃくちゃかわいい。