第4章 最初の晩餐
「もう変なやつは居ない、安心して入れ。…じゃあな」
引き戸が開いて、再び閉じる音。
今度は慎重に右側の引き戸を開け、誰も居ない事を確認してから中に入って引き戸を閉める。
刀剣男士用はどうか知らないけれど、こっちの引き戸には鍵がついている。ありがたい。
一人で使うには広い脱衣所。
洗面台は2つ、水飲み器や洗濯機まである。
服を脱ぐ前に、浴場を見ると一人ではもったいない、旅館に設置されていそうな内湯や、3つほどのシャワーヘッドやカランが設置されている。
見たわけじゃないけど、多分隣の刀剣達用は広く、シャワーセットの設置数も多めに着けられているんじゃないかな?
改めて、脱衣所で服を脱ぎ、体を洗って湯船に浸かる。男湯側は絶え間なく会話が飛び交って賑やか。ここの設計は温泉旅館でもモチーフにしてるのかな、と想像した。
「脱ぎまシタね、みなさん脱ぎまシタね!?蜻蛉切も、脱ぎまシタね!」
「風呂場で脱がない方が変だぞ、村正!下を隠せ!」
内湯の男女の壁、天井付近は空いていて向こうの会話が筒抜けである…。
これはどちらかというと学生寮に近いな。肩まで湯に浸かって温まり、浴室を出た。
脱衣所で新しい下着を纏い、寝巻き用と思われるスウェットを着る。クリーム色に近い黄色、フードが着いていて…電気ネズミがモチーフでしょ、これ。
フードにやや短めの耳、背に茶色のライン。ズボンに短い尾。ゆるふわ電気ネズミがデザインされたものでしょ…
これは意外とかわいいなぁ、とスウェットのつまむ。これも満場一致で買ったのかなぁ、微笑ましい。
お風呂に入る前に洗濯機を回していたのだけれど、まだすすぎの段階。
もうしばらくは時間を潰していようと、浴室を出た。
ガララ、と開けた時点で、視界の端に白い影がみえた。
少し離れた廊下で山姥切が一人、腕を組み壁に寄り掛かるように立っている。服装は最初にあった時の、白パーカー、ジーンズ。パーカーのフードは被らずに、出会った時や通常の服装の時よりも金髪がよく見える。
お風呂上がりなのか、その髪には少し水気のあるように見えた。
「話をしに、今からあんたの部屋に行ってもいいか?」
断る理由もないし、それに私としては洗濯機の仕事が終わるのをただ待つよりもその方が良かったので。いいよ、と言って自室に一緒に向かった。