第4章 最初の晩餐
「それは是非とも聞きたいなぁ。私の思い出なんて、小さい頃に一緒にお散歩したことしかなくって…」
「それでは、告別式スタイルにしてはいかがでしょう?先代はきっと、賑やかな方がお好きでしょうから、あまり形に捕らわれずに。前の主様を偲んで、かつ主様も歓迎して…」
前田が言えば、平野は「お葬式が挙げられないのなら、それがベストでしょうね」と同意した。
五虎退の虎が更にもう一匹すり寄ってくる。その一匹の頭から背を撫でながら周りを改めて見る。
「しっかし乱ちゃん。ここ、女の子少ないねー…」
ごろごろと喉を鳴らし始める、虎。
くすくすと笑う短刀達。
「ねぇねぇ、主さん。主さんはボク以外で誰が女の子に見える?こっそり教えてよー」
小さな体の短刀達と鳴狐の狐が私に寄る。押し詰めてくる。薬研が乱ちゃん以上に乗り気だ。
その乱ちゃんの言い方だと女子じゃないのも居るのかな?男装っ子とかも混じってるかもしれない…、
私はそっと、机の上に手を置いて指をそう思った人の方向へ向けて行く。
その方向を確認しつつ、うんうん頷いて答え合わせが始まった。
「大将、そいつは全部ハズレだ」
「嘘でしょ…、だってあの子…「骨喰兄さんだ」の、隣…「鯰尾兄さんだな」…。
あの人「次郎太刀の旦那か?」…JK「じぇいけい?加州の旦那の事か?」ホステスは?「宗三は男だぞ」」
うっそやろ…、と落ち込む。
流石に刀剣男士と言われるだけはある。皆男子なんだ。どんなに可愛くても、刀剣男子なんだ…。
そこで、ん?と疑問が一つ浮かぶ。
乱ちゃんを少し震える指を向けて。
「とうけんだんし…とうけん、男子?」
にっこりと笑って、乱ちゃんは自身を指さした。
「そっ!正解は…主さん以外では、"ボクも含めて全員男"なんだよ!」
こんな可愛い男がいるか!という気持ちよりも自分に自信持てなくなるわ…の気持ちが勝った。
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献杯、の合図とともに飲み物を天に掲げる。
未成年の私はソフトドリンク。短刀達もほとんどがソフトドリンクだけど、ここから見える薬研は日本酒のようだ。
刀剣達に肉体を与えた、刀剣の付喪神である彼らは例えどんな見た目であっても私よりも年上。年齢を重ねていくことはあっても、老いることはない。きっと私も、おばあちゃんの様にここで死ぬんだろう。
グラスを置いて私は箸を取った。