第4章 最初の晩餐
「すす、すみません……」
至近距離ででかい腹の音を鳴らして、恥ずかしくない訳がない。しかも、むこうとこっちじゃ時間がずれてるから、私にとってはいつもの夕食に3時間以上お預け食らったも同然…
あと、時間遡行軍から逃げる時に全力疾走もしたし。
「…っ、これは配慮が足りませんでした!今すぐ、今すぐ口にできるものを用意させて頂きます!」
バタバタとすごい勢いで走り去る長谷部。
短刀達に叱った声とはまた別の声が「君!廊下を走るのはやめ給え!」と叫んだ。
そういえば、スマホってどうなんだろう?
鞄から取り出してみる。圏外。時間は向こうの時間を表示させている。
ま、使えないんだろうとは思ったけれど…スマホを鞄に戻した。
…数分後。
「何故お前まで着いてくる」
「えー?そりゃあ、新しい主への興味だなっ」
わははと笑い、談笑しながら長谷部含む数人がやってきた。
眼帯を着けたホストみたいな人と、髪も服も白づくめの人。
それから3人とも胸元に漢字とふりがな…。覚えやすいように名札を着けてきてくれた。
「待たせたね、夕餉まではあと少しかかるから、おにぎりを持ってきたよ!」
あと、お茶だね、とお盆ごと置く。
この時間帯になると、皆も慌ただしくなってくるのか、遠くで名前を呼んだり、忙しない足音が聞こえる。部屋に差し込む光もオレンジ色になりつつあるので、ちょっと早いけれど部屋の電気を着けた。
「ありがとうございます、燭台切さん」
燭台切は、うんうんと頷いて「召し上がれ」とおにぎりを勧めてくれた。
何口かかぶりついていると、鶴丸が「俺も腹減ってきたなー」と呟く。
夕餉前のおにぎりはやや小さく、中には昆布が入っていて私の腹の虫は黙らせることが出来た。
お茶を一口飲んで「おいしかったです」と伝えると、燭台切は嬉しそうによかった、と笑った。
「長谷部くん、初期刀と近侍の話はしたの?」
「勿論だ。主にはまず初期刀を決めて頂く。初期刀は近侍以上に特別だ。近侍は主の側に仕えるがこれは状況によって変わる……
そう、特別なのだ…」
真剣な長谷部に鶴丸が吹き出して笑う。
その鶴丸に対して、長谷部が表情だけで怒る。
鶴丸は長谷部から私に視線を向けて言った。
「きっと、先代のように山姥切にするんだろう?ここの山姥切は極めていないのに極めているからな、初期刀を」