第3章 継承
「「不動!」」
長谷部と山姥切の声が被さる。
それが合図になったのか、重い空気はいつの間にか消えて、座っていた人たちも自分の意思で立ち上がったり、固まって座ったり、長谷部のように布団があった場所を撫でたり。
おーい、置いて行くぞーという声が廊下からして、私は急いで不動と呼ばれたその子を追った。
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不動と私と、途中から数人の少年達と。おばあちゃんが過ごした本丸の案内をしてもらった。
広く迷ってしまいそうな木造建築。こんなにも人がいれば部屋の数もそりゃあ多いよなぁ…。
箱庭と例えられた事もあり、建物の外には広い畑、牛小屋や鳥小屋、馬小屋等があって。それらはきちんと管理がされていた。
さっきまで集まっていた人の一部が、馬糞をかき集めていたり、畑の雑草を抜いていたり。皆それぞれに役割があるようで。
「…で、やっとあんたの部屋まで戻ってきたな。これで案内終わりかぁ~?」
本丸内を案内した時に一回来たけど、最後にまた部屋に案内される。
薬研か山姥切か、私の通学鞄を部屋に持ってきてくれたみたいだ。もう今までの学校に行けないだろうけれど。
「案内してくれてありがとう、不動くん」
「ん、お安い御用よ」
一緒に着いてきた、秋田に今剣、乱と厚にもお礼を言う。案内をしてもらいながら自己紹介を聞いたけれど、刀派、粟田口の短刀達が多く、兄弟であると聞いた。秋田と乱と厚に、兄弟達の名前を一度に言われたけど、そんな一回で覚えることが出来ない。
唯一、薬研は分かった、最初にあった刀剣男士だし…。
「あるじさまは、おへやでゆっくりしていてくださいね!しばらくしたら、おしえることがじょうずなひとがきますから!」
5人はキャッキャと小走りに廊下をかけていく。
途中で落ち着いた声で「廊下は走ってはいけないよ」と注意されて、元気な声ではーい!と返事が返されていた。
改めて部屋を見渡す。
神隠し、とは言われたけれど天井には蛍光灯(電気紐付き)、本棚にはちょっと古い漫画や専門誌、机にはノートパソコンまである。学習机っぽい。椅子はくるくる回って、クッション性優れたもの…。
そういえば、キッチンは割と最新の冷蔵庫やオーブンとかあったな…洗濯機はでかいの3つ。
割とここの本丸は快適な暮らしを送っているんじゃないだろうか?