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Nerine-ネリネ-

第3章 継承




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長谷部がどこかへいって、1時間もしないうちに子犬くらいの動物と、黒いスーツの人たちが3人ほどやってきた。女性1人と男性2人、子犬くらいの動物が「では担架を出しますね」と喋った。
少し驚いたけれども、もう驚く事に疲れてしまって喋るんだなぁ、くらいに感心してしまった。

てきぱきと担架に布団ごとおばちゃんを乗せて、ずり落ちないように細めのロープで固定して、スーツの人たちは去っていった。

長谷部もスーツの人が行ってから少しして戻ってきて、今この場には何十人といる人達と、私と、重い空気が取り残されてしまった。


「あの、おばあちゃんのお葬式とかって…」


そう、人が亡くなったらお葬式だ。
私は少し涙ぐんだものの、小さな頃とさっきあった程度で、ほとんど思い出がなかった。
ここの人達よりも遥かに思い出がなくて、ほとんど他人なくらいにおばあちゃんとの思い出がないのだ。だからこそ、お葬式をしてあげたいのだ。

その言葉を聞いて、帰ってきたのは長谷部の言葉。
しかし、とても辛そうに、苦しそうに。


「いえ、主。他の本丸では許可はされていますが、ここの本丸は出来ないのです。遺体も返して頂けないのです…」


おばあちゃんがさっきまでいた、布団が敷いてあった広い空間に長谷部はやってきて、跪く。そして手袋越しに、さっきまでいたおばあちゃんの残した体温でも探るように畳を撫でた。


「普通の審神者のいる本丸は、政府からの監視や指示、配給や本丸の異常への介入など、審神者と刀剣男士と政府でやっていくのがほとんどです。もちろん、本丸の全てがというわけでもありませんが。
ここの本丸に至っては、こちらから連絡を取る以外に政府は介入してきません。主と刀剣男士のみでやっていける、」

干渉も鑑賞もされない箱庭本丸というべきでしょうか。

その言葉に、何人かが無言で頷いた。


「その前に、だ。主は本丸についても刀剣男士についても、何一つ知らない。政府が平和だと思う世界で育ってきた箱入り娘だろう?だから前の主の意思を繋ぐために…、」

山姥切が私が何も知らないと話している最中に、大勢いる中からひょっこりと(若干ふらつきながら)顔を赤らめた、髪の長い少年が立ち上がった。
その手にはワンカップ、に甘と書かれた文字。

「よーするにまんばちゃんよー、皆で色々教えれば良いんだろー?」
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