第1章 魅惑のティーカップ 逢坂壮五
そんな淡い期待も儚く散る。
カフェに入ってみれば彼女はおろかお客は数名しかいない。
それもそうだ。
日曜日の午後、この時間ならカフェにいるとしてもお喋りをしたい人が多いだろうから全体的に仕切られた閉鎖的な静かなこの店は不向きだし、家族や友達とゲームセンターのような娯楽施設に行っている人の方が多い。
彼女が自分の来る日に都合良く居るだなんて到底思えない。
友人と優雅にティータイムでも過ごしていそうだ。
偏見かもしれないそんな妄想がふと浮かび。
もしかしたらまた奥の本棚に居るかな、なんて覗いてみるも静かな空間が流れているだけで、誰もいなかった。
適当な席に座り、メニューを開く。
そういえば彼女はここの常連なのだろうか。
中性的に整った人形の様な顔立ちや綺麗な濡羽色の黒髪、琥珀色の美しい瞳を思い出して少し残念に思っていた。
「何か...お探しですか?」
「あっ、いえ、人を、探していて...」
後ろから穏やかな優しい声でカウンターにいた男性が声を掛けてきて多少驚く。
「でも、今日はいないみたいで...この本を教えてもらったんですけど名前を聞いてなくて...」
カウンターまでいってその本を見せると男性は少し目を見開いた。
「どんな人ですか?」
「えっと、ストレートロングの黒髪で琥珀色の瞳をした銀枠の丸眼鏡を掛けている女性です」
記憶を思い起こしてそう答えれば男性は顎に手を当ててからちょっと待っててください、と関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアへと入って行ってしまった。
なぜ彼がバックに戻ったのかはわからないが、彼女の事を何か知っているのだろうか。
もし彼女とかだったらどうしよう。でも僕が呼んで不服そうな顔はしていなかったし...だとしたらどういう関係なのだろうか。
ぐるぐると巡る思考に頭を悩ませているとドアが不意に開いた。
店員と思われる男性が戻って来て、ドアが一度閉まるとすぐさまドアが開いた。
「多分レイに用があるお客さん」
「あぁ、この間の!」
「えっ、あっ、こ、こんにちは...?」