第2章 【燭さに】夜空に浮かぶ太陽
「あ、あの!僕、そこでカフェをやっているんだけど...良かったらどうかな...?」
「......へ...?」
「いやその!...朝から暇でね、せっかく作ったケーキが減らないんだ」
なんてね、とくしゃりと笑った顔がなんだか可愛らしくて、纏う空気が穏やかで。
声をかけてきた理由は多分売上げが取れなくて困った挙句の客引き...だったとしても不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「...ケーキ、何があるんですか?」
「えっ!?あ、ええとね、日替わりで今日はチーズケーキなんだ!レアとベイクド両方あるんだよ」
「行きます」
「え、」
「だから行きます」
色気より食い気
私はチーズケーキが大好物だった、それが売れていないなんて由々しき事態である。
そして何より客引きの割にはなんだか頼りない姿に、無下には出来ないなあと思ってしまった。
堤防から降りて軽く砂を叩いて改めてお兄さんと向き合うと、驚きつつもどこか安心したような顔で私を見ていた。
「...ありがとう、じゃあ案内するね」
「お願いします」
目的地は本当に直ぐ近くで、個人経営の小さなカフェ。あまり広さは無いがシンプルでも殺風景さが無く所謂オシャレで落ち着いた雰囲気だった。
入ってみれば私がいた場所がテラス席から丸見えで、ああ、そりゃ客引きもされるわと納得する。
お兄さんはお好きな席にどうぞ、とにこやかに言うと、カウンターキッチンへと入って行った。
そのカウンターにはショーケース型の冷蔵庫がありホールのチーズケーキが2つ並んでいる。
何これめちゃくちゃ美味しそう
大きすぎず小さすぎずの程よいそれは私のお腹から子気味良い音を鳴らせた。そういえばお昼食べていなかったなあ。
「ふふふ」
ふと頭上から聞こえる声に見上げるとお兄さんがショーケースの上から顔を出していた。
一部始終を見られていたのか...恥ずかしい...
「今日はチーズケーキを作って正解だったなあ」
「え、コレお兄さんが作ったんです...?」
「ああ、お店のメニューはだいたい僕が作っているよ」
すごい...ちょっとでも怪しいと思ってしまったことを心の中でお兄さんにそっと謝罪する。
驚きでぽかんとしていた所をまた笑われてしまったので、そそくさとショーケースから離れ、窓側の席に付いた。